安全研修
~農業用ドローンでの空中散布作業~

本資料は、農業用ドローンを用いた農薬等の空中散布作業を安全かつ適正に実施するための研修資料です。操縦者、補助者、作業責任者、委託者が共通理解を持ち、事故・農薬飛散・第三者被害・周辺環境への影響を防止することを目的とします。
1. 研修の到達目標
- 空中散布に関係する主な法令・ガイドラインを理解する。
- 散布計画、飛行計画、周辺確認、機体点検を確実に実施できる。
- 農薬のドリフト、第三者の立入り、架線接触、機体トラブル等のリスクを予防できる。
- 事故や異常発生時に、作業中止、連絡、記録、報告を適切に行える。
2. 関係法令・ガイドラインの確認
- 航空法関係:農薬散布は、農薬等を搭載して飛行することや散布行為が「危険物の輸送」「物件投下」に該当する場合があるため、必要に応じて国土交通大臣の許可・承認、飛行計画の通報、飛行日誌の記録等を確認します。
- 農薬取締法関係:使用する農薬は、登録内容、作物名、使用時期、使用量、希釈倍数、使用回数、使用方法を必ずラベルで確認し、基準外使用を行いません。
- 農林水産省ガイドライン:無人マルチローターによる農薬の空中散布では、実施区域・実施除外区域、周辺環境、気象条件、ドリフト防止、事故時対応を踏まえた安全管理を行います。
- 地域ルール:都道府県や市町村、農業団体等が散布計画書、実績報告、事前周知等を求めている場合があります。作業地のルールを事前に確認します。
3. 作業前の安全確認
- 散布計画の作成:実施場所、予定日時、作物名、使用農薬名、散布量、希釈倍数、実施区域、実施除外区域、緊急連絡先を明確にします。
- 周辺環境の確認:住宅、学校、病院、道路、鉄道、電線、電柱、水路、水道水源、養蜂箱、養蚕施設、魚介類の養殖場、有機農業圃場、収穫間近の作物を確認します。
- 関係者への周知:周辺住民、隣接農地の耕作者、公共施設、養蜂家等に、散布日時、目的、農薬名、連絡先を事前に知らせます。
- 気象確認:風向・風速・降雨の有無・気温・湿度を確認します。強風、突風、降雨が予想される場合は、作業を延期します。
- 機体・散布装置点検:バッテリー、プロペラ、モーター、通信状態、GPS、リモートID、タンク、配管、ノズル、吐出量、漏れの有無を確認します。
- 保護具の着用:農薬ラベルに従い、防護服、手袋、保護メガネ、マスク、長靴等を着用します。
4. 散布中の安全管理
- 操縦者、補助者、作業責任者の役割を明確にし、作業開始前に合図・連絡方法を確認します。
- 第三者が実施区域や飛行経路付近に立ち入らないよう、看板、カラーコーン、見張り、声掛け等で管理します。
- 風下へのドリフトを防ぐため、風向を確認し、周辺作物や住宅等へ農薬が流れない飛行経路を設定します。
- 機体メーカーの取扱説明書に示された飛行高度、飛行速度、飛行間隔、最大風速の基準を守ります。基準がない場合でも、低空・低速・均一散布を基本とし、作物上の安全な高度を維持します。
- 散布状況、ノズルの詰まり、薬液漏れ、バッテリー残量、通信状態、気象変化を常時確認します。
- 架線、樹木、建物、電柱、圃場の段差等に近づきすぎないよう、危険箇所を事前に明示し、無理な飛行を避けます。
- 異常、強風、第三者の接近、機体の不安定、薬液漏れを確認した場合は、直ちに散布を中止し、安全な場所に着陸させます。
5. 作業後の確認と記録
- 散布面積、散布日時、使用農薬、希釈倍数、使用量、気象条件、操縦者、補助者、異常の有無を記録します。
- 飛行日誌、散布実績、農薬使用記録を整理し、必要な期間保管します。
- タンク、配管、ノズルを洗浄し、洗浄液や残液は周辺環境に影響を与えない方法で処理します。
- バッテリーの状態、機体の損傷、プロペラの傷、散布装置の詰まりを確認し、次回作業に備えて整備します。
- 周辺から苦情、作物被害、体調不良、魚介類・蜂等への影響の連絡があった場合は、速やかに作業責任者へ報告します。
6. 事故・異常発生時の対応
- 作業を中止する:散布を止め、機体を安全な場所へ着陸させます。
- 人命・安全を最優先する:負傷者がいる場合は応急対応を行い、必要に応じて救急・消防・警察へ連絡します。
- 被害拡大を防止する:農薬の流出、ドリフト、立入り、火災、二次接触を防ぐ措置を講じます。
- 関係先へ連絡する:作業責任者、委託者、土地所有者、関係機関、必要に応じて航空・農薬関係の窓口へ連絡します。
- 記録を残す:発生日時、場所、機体、農薬名、気象、飛行状況、被害状況、対応内容、写真等を記録します。
- 原因を確認し再発防止する:機体、操縦、気象、計画、周知、点検のどこに問題があったかを確認し、次回作業前に対策を共有します。
7. 作業前チェックリスト
| 確認項目 | 確認内容 | 確認 |
| 許可・承認 | 必要な飛行許可・承認、飛行計画、地域届出を確認した。 | □ |
| 農薬 | ラベル、使用基準、作物、使用量、希釈倍数、使用回数を確認した。 | □ |
| 周辺環境 | 住宅、道路、公共施設、養蜂箱、水源、隣接作物、架線を確認した。 | □ |
| 周知 | 関係者、周辺住民、隣接農地の耕作者に事前連絡した。 | □ |
| 気象 | 風向・風速・降雨・突風の見込みを確認した。 | □ |
| 機体 | バッテリー、プロペラ、通信、GPS、散布装置、ノズルを点検した。 | □ |
| 人員 | 操縦者・補助者・作業責任者の役割と連絡方法を確認した。 | □ |
| 緊急対応 | 緊急連絡先、作業中止基準、事故時の報告手順を確認した。 | □ |
8. 理解度確認
- 農薬散布で「危険物の輸送」や「物件投下」に該当する場合、事前に何を確認する必要がありますか。
- ドリフトを防止するために、作業前と作業中に確認すべきことを3つ挙げてください。
- 散布区域の近くに学校、住宅、養蜂箱がある場合、どのような対応が必要ですか。
- 散布中に風が強くなった、または第三者が近づいた場合、最初に取るべき行動は何ですか。
- 事故発生後に記録すべき情報を挙げてください。
9. 参考資料
- 農林水産省「無人航空機による農薬等の空中散布に関する情報」:無人航空機による農薬等の空中散布に関する航空安全・農薬安全使用・安全ガイドライン等を確認するために参照。
- 農林水産省「無人マルチローターによる農薬の空中散布に係る安全ガイドライン」:散布計画、周辺への情報提供、ドリフト防止、飛行高度・風速の目安、事故時対応等を整理するために参照。
- 国土交通省「無人航空機の飛行許可・承認手続」:農薬散布に関係する飛行許可・承認、飛行計画の通報、機体登録等の確認事項を整理するために参照。
- 国土交通省「無人航空機のよくあるご質問及び資料」:航空法上の無人航空機ルール、関係資料、危険物輸送・物件投下等の考え方を確認するために参照。
- 農林水産省「農薬コーナー」:農薬取締法、農薬登録制度、登録農薬の使用基準、農薬の適正使用に関する基本事項を確認するために参照。
- 農林水産省「農薬の適正な使用」:農薬危害防止、ラベル確認、住宅地等周辺での農薬使用、農薬事故防止等の内容を確認するために参照。
- 農林水産省「農薬飛散対策技術マニュアル」:ドリフト防止、周辺作物への飛散影響防止、散布方法・気象条件・遮へい等の対策を確認するために参照。
- 環境省「農薬飛散による被害の発生を防ぐために」:住宅地等での農薬飛散による健康被害防止、周辺住民への配慮に関する内容を確認するために参照。
- 新潟県「農薬の使用基準」:農薬使用基準、使用記録、農薬使用者が守るべき事項、地域での農薬安全使用指導の観点を確認するために参照。




