安全研修
~コンバイン作業~


1. 研修の目的

本研修は、稲刈り等で使用するコンバイン作業における転落・転倒、巻き込まれ、接触、火災、熱中症などの事故を未然に防ぐことを目的とします。
作業者全員が「止める・見る・合図する・近づかない」を共通ルールとして確認し、安全な収穫作業を行います。


2. 研修の流れ

  1. コンバイン事故の特徴と危険箇所を確認する
  2. 作業前点検と服装・保護具を確認する
  3. 圃場内作業、旋回、後進、畦越え時の安全行動を確認する
  4. 詰まり・巻き付き除去時の停止手順を確認する
  5. 移動・積み下ろし・緊急時対応を確認する
  6. 最後にチェックリストで理解度を確認する

3. コンバイン作業で特に注意する事故

主な危険起こりやすい場面基本対策
転落・転倒畦越え、圃場の出入り、坂道、ぬかるみ、積み下ろし低速・直角進入、籾を排出して重心を下げる、歩み板を確実に固定する
巻き込まれ刈取部、搬送部、カッター、チェーン、手こぎ部、詰まり除去エンジン停止、キーを抜く、回転停止を確認、防護カバーを外したまま作業しない
接触・ひかれ後進、旋回、補助者が機械の後方や死角に入る場面作業前に合図を決める、周囲確認、必要時は停車・降車確認、無断接近禁止
火災マフラー・エンジン周辺への藁屑堆積、燃料補給、乾燥した圃場こまめな清掃、火気厳禁、消火器の携行、異臭・煙があれば直ちに停止
熱中症・体調不良高温時の長時間作業、単独作業、休憩不足水分・塩分補給、定時休憩、声かけ、単独作業時の連絡手段確保

コンバインによる死亡事故件数の推移

農林水産省の農作業死亡事故調査では、農業機械作業に係る死亡事故の機種別内訳として「自脱型コンバイン」の件数が公表されています。以下は、近年の自脱型コンバインによる死亡事故件数の推移です。なお、ここで示す件数は死亡事故に限ったものであり、負傷事故やヒヤリ・ハットを含む全ての事故件数ではありません。

自脱型コンバインによる死亡事故件数農作業死亡事故全体に占める割合
令和元年(2019年)9人3.2%
令和2年(2020年)12人4.4%
令和3年(2021年)16人6.6%
令和4年(2022年)11人4.6%
令和5年(2023年)13人5.5%
令和6年(2024年)17人5.9%
  • コンバインによる死亡事故は毎年発生しており、令和6年は17人で、直近6年間では令和3年と並んで高い水準です。
  • 事故件数は収穫時期の作業量、天候、圃場条件、作業者の高齢化、単独作業の有無などの影響を受けるため、単年の増減だけで判断せず、継続的な注意喚起が必要です。
  • 農研機構の整理では、自脱型コンバインの死亡事故原因として、機械の転落・転倒や、ひかれ事故が重要な注意点として示されています。
  • 研修では、件数の推移を示したうえで、畦越え・路肩走行・後進・詰まり除去時の停止確認を重点項目として説明します。

出典:農林水産省「農作業死亡事故調査」「農作業安全をめぐる情勢」、農研機構 農作業安全情報センター「死亡事故の動向」。令和元年〜令和4年は農林水産省公表資料、令和5年・令和6年は農林水産省「農作業安全をめぐる情勢」および農研機構掲載資料を基に整理。


4. 作業前点検と準備

  • 取扱説明書を確認し、点検・整備は平坦で安全な場所で行う。
  • エンジンオイル、冷却水、燃料、バッテリー、ベルト、チェーン、刈刃、カッター、防護カバーを確認する。
  • バックミラー、後方確認装置、バックブザー、ライト、警報表示、ブレーキ、変速レバーを確認する。
  • マフラー・エンジン周辺、刈取部、排藁部に付着した藁くずや泥を取り除く。
  • 服装は袖口・裾が締まるものとし、タオルやひもなど巻き込まれやすいものを身に付けない。
  • ヘルメット、手袋、安全靴、必要に応じて防塵対策を使用する。
  • 携帯電話、救急用品、消火器、飲料水を準備し、緊急連絡先を全員で共有する。

5. 作業中の安全ルール

5.1 周囲確認と合図

  • 補助者は、運転者の許可なく機械の後方・側方・刈取部周辺に近づかない。
  • 後進・旋回前は必ず一度停止し、ミラーだけに頼らず目視で確認する。
  • 作業前に「停止」「接近」「異常」「緊急停止」の合図を決め、全員で練習する。
  • 子ども、見学者、ペットを作業区域に入れない。

5.2 圃場の出入り・畦越え・旋回

  • 畦越えや圃場への出入りは、低速でできるだけ直角に進入する。
  • 段差、ぬかるみ、傾斜地では急ハンドル・急ブレーキ・急旋回を避ける。
  • グレンタンクに籾を多く積んだ状態で坂道や畦越えをしない。
  • 危険箇所にはポール、カラーコーン、目印を設置し、作業前に全員で確認する。

6. 詰まり・巻き付き対応の手順

  1. 異音、詰まり、藁巻き付き、警報表示に気付いたら、すぐに安全な場所で停止する。
  2. 刈取クラッチ、脱こくクラッチ、作業機クラッチを切る。
  3. エンジンを停止し、キーを抜く。
  4. 回転部が完全に止まったことを確認する。
  5. 手や足を直接入れず、工具を使って詰まりを取り除く。
  6. 防護カバーを外した場合は、必ず元に戻してから再始動する。
  7. 再始動前に周囲の人が離れていることを確認し、合図してから作業を再開する。

重要:「少しだけだから」「慣れているから」とエンジンをかけたまま手を入れる行為は、重大事故につながります。詰まり対応は、必ず停止・キー抜き・完全停止確認を徹底します。


7. 道路移動・積み下ろし時の注意

  • 道路走行前に灯火類、反射材、低速車マーク、車幅、積載状態を確認する。
  • 公道では交通法規を守り、無理な横断や急な進路変更をしない。
  • 運搬車への積み下ろしは、平坦で十分な広さのある場所で行う。
  • 歩み板は強度・幅・長さを確認し、確実に固定する。
  • 積み下ろし途中で主クラッチやサイドクラッチを急操作しない。
  • 誘導者を置く場合は、機械の進路上に立たず、運転者から見える位置で合図する。

8. 緊急時対応

  • 事故・けが・火災を発見したら、まず機械を停止し、二次災害を防ぐ。
  • 負傷者を無理に動かさず、出血・意識・呼吸を確認し、必要に応じて119番通報する。
  • 場所を正確に伝えられるよう、圃場名、住所、目印、進入経路を事前に共有する。
  • 火災時は安全な距離を確保し、初期消火が困難な場合は直ちに避難する。
  • 単独作業の場合は、作業開始・終了予定時刻と連絡方法を家族や責任者に伝える。

9. 研修用チェックリスト

確認項目はいいいえ
作業前点検を実施し、防護カバー・警報装置・ブレーキを確認した
作業区域、危険箇所、退避場所、緊急連絡先を全員で確認した
後進・旋回・停止・緊急時の合図を決めた
補助者が機械の後方や刈取部周辺に無断で近づかないルールを確認した
詰まり対応時はエンジン停止、キー抜き、完全停止確認を徹底する
畦越え・坂道・積み下ろしは低速で慎重に行う
藁屑清掃、消火器準備、火気厳禁を確認した
休憩、水分・塩分補給、体調確認の方法を決めた

10. 参考情報

本資料は、農林水産省の農作業安全研修・啓発資料、農研機構 農作業安全情報センターのコンバイン安全ポイント、日本農業機械化協会の農作業安全研修資料等を参考に、現場研修で使いやすい形に整理したものです。地域の圃場条件、使用機種、作業体制に合わせて内容を追記・修正してください。

参考元確認した主な内容本資料での活用箇所
農林水産省「農作業安全に関する研修について」「農作業安全の啓発資料」農作業安全研修の進め方、基礎研修用資料、コンバインを含む農業機械の事故事例、熱中症対策、緊急時対応、啓発資料の構成。研修の目的、研修の流れ、事故類型の整理、熱中症対策、チェックリスト、15分研修の構成。
農研機構 農作業安全情報センター「コンバイン」「農作業安全ポイント(コンバイン)」コンバインの死角、後進時の接触、畦畔・段差での転落、補助者の接近禁止、作業前打合せ、停車・降車確認、後方確認装置を過信しないこと。周囲確認と合図、圃場の出入り・畦越え・旋回、補助者の安全ルール、危険箇所の目印設置。
一般社団法人 日本農業機械化協会「農作業安全研修資料」「農作業安全指導マニュアル」農作業事故の要因、リスクアセスメント、危険予知、5S、安全研修の組み立て方、コンバインを含む農業機械事故の事例と対策。作業前点検、詰まり・巻き付き対応、講師用読み上げ例、配布用チェックシート、現場での改善活動。
メーカー等が公開するコンバイン安全情報・取扱説明書機種ごとの安全装置、始業点検、手こぎ作業、グレンタンク排出、歩み板の条件、点検・清掃・整備時の注意事項。使用機種に合わせた具体的な点検項目、禁止事項、操作手順、現場説明時の補足。

参考情報を使う際の確認ポイント

  • 研修前に、農林水産省や農研機構等の最新資料が更新されていないか確認する。
  • 使用するコンバインのメーカー、型式、年式、装備されている安全装置を確認し、取扱説明書の記載を優先する。
  • 圃場の段差、路肩、畦、ぬかるみ、進入路、退避場所、携帯電話の電波状況を事前に確認し、資料内の危険箇所に反映する。
  • 作業者の人数、補助者の配置、経験年数、単独作業の有無に応じて、合図、連絡方法、緊急時の役割分担を具体化する。
  • 地域のJA、普及指導センター、自治体等が配布する安全資料や事故情報がある場合は、地域事例として追記する。
  • 本資料は研修用の整理資料であり、法令、メーカー指定の点検・整備手順、事業所の安全管理規程に代わるものではない。

主な参照先